伝えたつもりなのに伝わらないときに見直すこと

伝えたつもりなのに伝わらないときに見直すこと

「前にも言ったよね」と腹が立つ。けれど、相手は「そんなふうには聞いていない」と答える。家ではゴミを出してほしかったのに、職場では期限を守ってほしかったのに、話した後も同じことが繰り返されます。

伝えることと、口に出すことは同じではありません。自分の事情、相手にしてほしい行動、期限、できなかった場合の相談先まで共有されて、初めて同じ場面を思い描けます。相手の理解力を責める前に、会話の中身を具体的に点検します。

目次

実際に言った言葉を書き起こす

「ちゃんとして」「早めにお願い」「少し手伝って」だけでは、基準が人によって変わります。記憶で美化せず、可能な限りそのまま書きます。自分の中では明確でも、相手が行動を選べる言葉になっていたかを見ます。

次に、相手にしてほしい動作へ変えることも確認します。「部屋をきれいにして」ではなく、「床の服を籠へ入れ、机の食器を台所へ運んで」と伝えます。「資料を急いで」は、「木曜十五時までに一ページ目を共有して」にします。見て確認できる形まで具体化します。

さらに、目的を一文だけ添えることも確認します。なぜ必要か分からない依頼は、相手の中で優先順位が下がります。「金曜の会議で使うため」「朝の回収に間に合わせるため」と短く説明します。長い苦労話ではなく、期限や方法を決める材料になる目的を伝えます。

相手が理解した内容を聞く

「分かった?」と聞けば、多くの人は「分かった」と答えます。「いつ、何から始める予定?」と尋ねれば、理解の違いが見えます。試験のように問い詰めず、二人の認識を合わせるために聞きます。

次に、自分の当たり前を説明することも確認します。「報告は終わってから」「家族なら気づくべき」など、自分の常識を相手も共有しているとは限りません。育った家庭や職場が違えば、普通の基準も違います。暗黙の決まりを期待するなら、最初に言葉へ出す必要があります。

さらに、一度に一件だけ頼むことも確認します。不満をためた後に話すと、洗濯、連絡、休日の過ごし方まで一度に出しやすくなります。相手は何から直せばいいか分からなくなります。今回困った場面を一件選び、別の問題は別の日に扱います。 また、感情と依頼を分けることも確認します。「寂しかった」と伝えることと、「帰宅が二十一時を過ぎる時は連絡してほしい」と頼むことを分けます。気持ちだけでは相手が次の行動を決められず、依頼だけでは背景が見えません。両方を短く並べます。

話す時刻を選ぶ

出勤五分前、運転中、子どもを寝かせている最中に重要な話をしても、相手は受け取れません。「今夜二十分話せる?」と時間を確保します。内容だけでなく、聞ける状態を作ることも伝える側の仕事です。

次に、手段を変えることも確認します。日時や金額は口頭だけでなく、会話後に一文で送ります。感情の話を長文メッセージだけで済ませると、語気が補われて誤解される場合があります。事実は文字、温度が必要な話は対面や通話など、内容に合う方法を選びます。

さらに、相手の制約を聞くことも確認します。できない理由が反抗とは限りません。木曜までに無理なら、今抱えている仕事、使える時間、手伝いが必要な箇所を聞きます。条件を知れば、期限を変えるか、範囲を減らすか、別の人に頼むかを選べます。 また、合意したことを最後にまとめることも確認します。「では、あなたが水曜に下書きを送り、私が木曜午前に確認する」で終えます。誰が、いつ、何をするかを一文にします。話し合った満足感だけで終わらず、次に確認できる約束を残します。

一回で伝わる前提を捨てる

新しい家事の分担や仕事の流れは、最初から完璧には回りません。決めた通りにできなかった時は、「どこを勘違いした?」と確認します。同じ説明を大声で繰り返すより、抜けていた条件を一つ足します。

次に、伝わらない相手との限界も決めることも確認します。具体的に頼み、確認し、相手も同意したのに何度も守られない場合は、説明の問題ではありません。任せる範囲を変える、期限前に確認する、契約や関係を見直す必要があります。伝え方だけで全員を動かせるわけではありません。

さらに、次の会話をメモで準備することも確認します。事実、困った影響、お願い、期限の四行を書いてから話します。たとえば「昨日連絡なく二時間遅れた/予定を変更した/二十一時を過ぎる時は連絡がほしい/次回から」とまとめます。責める言葉を増やさず、必要な材料を落としません。 また、セッションで会話のすれ違いを再現することも確認します。本人の中では十分に伝えた記憶があるため、抜けている部分を一人で見つけにくいものです。セッションでは、実際の言葉、相手の返答、期待した行動、起きた行動を順に並べます。 そのうえで、暗黙の基準、感情と依頼、確認方法、繰り返された時の限界を決めます。うまい話し方を覚えるだけではありません。二人が同じ行動を思い描けるところまで、曖昧だった会話を具体化する時間です。

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この記事を書いた人

一般社団法人行動変容協会代表理事。エモーションフリー他、各種セラピーの開発者。20年以上、メンタルの世界を見てきて、様々な症例に対応しています。

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