「全部できるか、全部やらないか」から卒業する

「やるならちゃんとやらなきゃ」
「中途半端なら意味がない」
「どうせ最後までできないなら、最初からやらない方がマシ」

こういう考え方が強い人は少なくありません。
一見すると真面目で、基準が高くて、きちんとしている人に見えます。
でも実際には、この考え方があるせいで動けなくなっていることがよくあります。

やるか、やらないか。
成功するか、失敗するか。
完璧か、ダメか。
この二択で物事を見ていると、人生はかなり重くなります。
なぜなら現実のほとんどは、その真ん中にあるからです。

本当は6割できたでも前進ですし、昨日より少しマシでも十分変化です。
でも0か1の思考が強いと、その途中経過が全部「やれていない」に見えてしまう。
すると小さな前進を受け取れず、動く前から自分を止めるようになります。
もったいない話です。

目次

0か1思考の人は、理想が高いというよりスタート条件が厳しすぎる

0か1思考の人は、向上心がある人でもあります。
適当にやりたくない。
どうせやるなら意味のある形にしたい。
人に見せても恥ずかしくないものにしたい。
この気持ち自体は悪くありません。

ただ問題は、その理想を「始める条件」にしてしまうことです。

時間がたっぷりある日にやろう。
ちゃんと理解してから始めよう。
一回である程度の形にしよう。
疲れていない日にやろう。
失敗しない見通しが立ってから動こう。

こうして条件を並べていくと、当然ですが始まりません。
そんな都合のいい日を待っているうちに、1週間、1か月、場合によっては何年も過ぎます。

ここで大事なのは、動けない理由を意志の弱さにしないことです。
動けないのではなく、動くための条件を厳しくしすぎているだけかもしれません。

「中途半端はダメ」が、結果的に何も残さないことがある

0か1思考が強い人は、中途半端を嫌います。
でも現実では、中途半端の積み重ねでしか前に進まないことがほとんどです。

文章も、最初から名文は出ません。
片づけも、一日で家中が整うことはあまりありません。
人間関係も、最初から完璧な距離感にはなりません。
仕事も習慣も、少しずつ微調整しながら形になっていきます。

それなのに「一度でちゃんとできないなら意味がない」と考えると、試す回数そのものが減ります。
試す回数が減れば、当然うまくなる機会も減ります。
つまり、失敗を避けようとしているつもりで、成長の入り口まで閉じてしまうのです。

少し厳しめに言えば、完璧を求めすぎる人は、失敗を避けているというより、失敗した自分を見たくないだけのこともあります。
そこは悪いことではありません。誰だって見たくないです。
ただ、その気持ちに人生のハンドルを渡してしまうと、無難に止まったままになります。

0か1思考の裏には「できない自分はダメ」という不安がある

この思考が強い人は、ただ几帳面なだけではありません。
根っこには「ちゃんとできない自分には価値がない」という不安が入っていることがあります。

だから、雑に始めるのが怖い。
途中で止まるのが怖い。
思ったよりできない自分を見るのが怖い。
人より遅いと感じるのが怖い。

ここで起きているのは、単なる作業の問題ではなく、自己評価の問題です。
できるかどうかが、そのまま自分の価値の判定になってしまっている。
だから着手が重くなるのです。

でも本当は、うまくできない日があることと、あなたの価値は別の話です。
今日は疲れているのかもしれない。
今はまだ慣れていないだけかもしれない。
手順が大きすぎるのかもしれない。
この現実的な見方が入るだけで、かなり楽になります。

「全部できないならダメ」ではなく、
「今日はどこまでならできるか」に問いを変える。
この切り替えが、行動変容ではかなり大きいです。

卒業のコツは、60点で出すことではなく“途中を認めること”

0か1思考から抜けるために、よく「60点でいい」と言われます。
それは間違っていません。
でも、60点で出せない人にとっては、その60点すら高く感じることがあります。

だから、もっと細かくして大丈夫です。

5分だけやる。
一段落だけ書く。
1か所だけ片づける。
返事の下書きだけ作る。
今日は準備だけにする。

こういう小さい動きは、0か1思考の人には物足りなく見えるかもしれません。
でも、小さいからこそ続きます。
続くから、現実が動きます。
現実が動くと、「全部できなくても進める」という新しい学習が入ります。

そしてここで大事なのは、途中をちゃんと認めることです。
まだ終わっていなくても、着手した。
少しでも進んだ。
前より止まる時間が短かった。
この事実を受け取る。

行動変容は、完璧な一歩で起きるものではありません。
小さく動いて、小さく修正して、小さく積み上げる中で起きます。
0か1の世界から抜けるとは、雑になることではなく、現実に合った進み方を覚えることです。

もし今、「全部できないならやりたくない」が強く出ているなら、それはあなたが怠けているからではありません。
ただ、始める条件が厳しすぎるだけかもしれません。

人生は、100点を出した日だけでできているわけではありません。
半端でも、途中でも、少しずつでも進めた日が積み重なって変わっていきます。
だからこそ、そろそろ「全部できるか、全部やらないか」から卒業してもいい頃です。

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この記事を書いた人

一般社団法人行動変容協会代表理事。エモーションフリー他、各種セラピーの開発者。20年以上、メンタルの世界を見てきて、様々な症例に対応しています。

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